AWS Well-Architected Tool と Trusted Advisor
の連携で実現するレビュー効率化

はじめに

こんにちは!クラウド活用推進担当の安田です。

最近、AWS Well-Architected Tool と Trusted Advisor の統合機能を実際に試してみる機会がありました。

今回は、実際に使ってみて感じた「統合機能の特徴と使用感」をお伝えします。

目次

  1. 統合機能の概要
  2. 統合機能を使わない場合の作業
  3. 統合機能を試してみた理由
  4. 実際の設定手順
  5. まとめ
  6. 参考リンク

統合機能の概要

AWS Well-Architected Tool とは

AWS Well-Architected Tool は、AWSが提供するベストプラクティス評価ツールです。システムアーキテクチャがAWSのベストプラクティスに準拠しているかを評価することを目的としています。

評価は「運用上の優秀性」「セキュリティ」「信頼性」「パフォーマンス効率」「コスト最適化」「持続可能性」の6つの柱に基づいて行われます。質問形式でレビューを実施し、改善推奨事項の提供や進捗追跡ができます。

すべてのAWSアカウントで無料で利用できます。


AWS Trusted Advisor とは

AWS Trusted Advisor は、AWS環境の設定状況を自動的にチェックし、最適化の推奨事項を提供するサービスです。AWS環境の設定を自動分析し、改善点を特定することを目的としています。

チェック項目は「コスト最適化」「パフォーマンス」「セキュリティ」「耐障害性」「サービス制限」の5つのカテゴリに分かれています。リアルタイムでの設定チェック、推奨事項の提供、定期的な更新が行われます。

基本機能は無料で利用できますが、詳細機能を使うには Business 以上のサポートプランが必要です。


連携機能とは

この連携機能は、Trusted Advisor のチェック結果を Well-Architected Tool に自動的に反映させる機能です。

どんなことができるか

自動連携: Trusted Advisor の結果が Well-Architected のレビューに自動反映
統合表示: 一つの画面で両方の結果を確認可能
追加コストなし: 既存サービスの機能なので追加料金不要で連携機能を利用可能

統合機能を使わない場合の作業

一般的なレビュー作業の流れ

手動での確認作業

統合機能を使わない場合、以下のような手順でレビューを実施することが一般的です:

・Trusted Advisor のチェック結果を確認・記録
・Well-Architected の質問項目と照らし合わせて評価
・レビュー資料への結果の転記
・設計書やアーキテクチャ図との整合性確認

この方法の特徴

手動作業が中心: 各ツールの結果を個別に確認する必要がある
照合作業が必要: 結果の対応付けを手作業で実施しなければいけない
見落としのリスク: 手動確認による確認漏れの可能性がある

統合機能を試してみた理由

レビューの効率化の方法として、いくつか選択肢があります。下記で比較をしました。

他の選択肢との比較

オプション コスト 複雑さ メリット デメリット
サードパーティツール 中~高 高機能、カスタマイズ可能 高コスト、ベンダーロックイン
オープンソース 低~中 カスタマイズ自由度高 保守負担、サポート限定
自社開発 完全カスタマイズ 開発・保守コスト大
AWS統合機能 統合性、信頼性 機能制限あり

統合アプローチの特徴

コスト効率性

追加コストなし: Business / Enterprise サポートプランに含まれる機能を活用

運用コスト削減: 手動作業の自動化による人的コスト削減

実装の簡易性

AWS ネイティブ: 既存サービスの統合機能を活用

設定の簡単さ: IAM ロール作成と連携設定のみで実現

信頼性と継続性

AWS公式サポート: 公式サービスによる高い信頼性

実際の設定手順

設定前の確認事項

統合機能を使うための前提条件を確認しました:

AWS サポートプラン: Trusted Advisorで全項目をチェックをするには、Business 以上のサポートプランが必要です。
IAM 権限: Trusted Advisorを有効化したアカウントで、チェック項目の連携を許可するためのロール作成が必要です。

実際の設定手順

1. Trusted Advisor 設定アカウントでの準備

カスタム信頼ポリシーの作成

以下のポリシーをIAMロールに設定します。WORKLOAD_OWNER_ACCOUNT_IDとACCOUNT_IDは実際のアカウントIDに置き換えてください。

    {
        "Version": "2012-10-17",
        "Statement": [
            {
                "Effect": "Allow",
                "Principal": {
                    "Service": "wellarchitected.amazonaws.com"
                },
                "Action": "sts:AssumeRole",
                "Condition": {
                    "StringEquals": {
                        "aws:SourceAccount": "WORKLOAD_OWNER_ACCOUNT_ID"
                    },
                    "ArnEquals": {
                        "aws:SourceArn": "arn:aws:wellarchitected:*:ACCOUNT_ID:workload/*"
                    }
                }
            }
        ]
    }

アクセス許可ポリシーの設定

Trusted Advisorへのアクセス権限を付与します。

    {
        "Version": "2012-10-17",
        "Statement": [
            {
                "Effect": "Allow",
                "Action": [
                    "trustedadvisor:DescribeCheckRefreshStatuses",
                    "trustedadvisor:DescribeCheckSummaries",
                    "trustedadvisor:DescribeRiskResources",
                    "trustedadvisor:DescribeAccount",
                    "trustedadvisor:DescribeRisk",
                    "trustedadvisor:DescribeAccountAccess",
                    "trustedadvisor:DescribeRisks",
                    "trustedadvisor:DescribeCheckItems"
                ],
                "Resource": [
                    "arn:aws:trustedadvisor:*:ACCOUNT_ID:checks/*"
                ]
            }
        ]
    }

2. Well-Architected Tool での設定

ワークロード定義の手順:

  1. Trusted Advisorを有効化しているアカウントのAccount IDを指定 スクリーンショット 2025-10-06 160831.png
  2. リソース定義を選択(Workload Metadata / AppRegistry / All) スクリーンショット 2025-10-06 160856.png
  3. ワークロードを作成します。作成すると、Trusted Advisorと連携するためのIAMロールが自動で作成されます。

チェック結果の可視化

統合後のチェック結果は以下のように確認できます。Trusted Advisorのチェック項目がワークロード画面に統合表示され、各項目のステータス(OK/警告/エラー)を一目で確認できるようになります。

スクリーンショット 2025-10-06 165646.png

まとめ

AWS Well-Architected Tool と Trusted Advisor の統合機能を実際に試してみた結果、手動作業の一部を効率化できることが分かりました。


試してみて分かったこと

実際に使ってみて、いくつかの気づきがありました。

まず、想定以上に導入がスムーズでした。設定作業は30分程度で完了し、すぐにチェック結果の連携が始まりました。

次に、レビュー作業の流れが変わりました。Well-Architected Tool の画面だけで確認が完結するようになり、作業が効率化されました。

注意点として、Trusted Advisorの項目はワークロードに連携されますが、Well-Architectedの質問への回答は自動では行われません。連携された情報を参考にしながら、質問への回答は手動で行う必要があります。


向いている場面・向いていない場面

向いている場面

・定期的なレビューを実施している環境
・Business 以上のサポートプランを利用している場合
・手動作業の効率化を図りたい場合

向いていない場面

・高度にカスタマイズされたチェック項目が必要な場合
・ビジネス要件に特化した詳細な分析が中心の場合
・基本サポートプランのみの利用環境

最後に

この統合機能は簡単に導入ができ、レビュー作業の一部を効率化する有用なツールだと感じました。

ただし、すべての作業を置き換えるものではなく、従来の手動確認や専門的な分析と組み合わせて使うことで、より効果的に活用できそうです。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

参考リンク

AWS Well-Architected Tool での Trusted Advisor の有効化

AWS Well-Architected Tool

AWS Trusted Advisor

AWS Well-Architected Framework

クラウド基盤ソリューション