導入事例
「おもてなしの心」で日本の魅力を世界に発信!東京観光のリーディングカンパニー
戦後まもない昭和23年(1948年)8月、「観光事業を通じて多くの日本の人々に夢を、外国の人々には平和な日本の真の姿を紹介したい」という理念のもとに創業。以来70余年、「おもてなしの心」を第一に、東京観光の代名詞ともいえる観光バス事業を中心に、ホテル、不動産、都営バスの運行受託に加え、レストランクルーズなど、はとバスグループとして幅広い事業を展開しています。東京観光のリーディングカンパニーとして、東京の魅力を、さらには日本の魅力を世界に発信することで、日本全体の観光に貢献する企業を目指しています。
老朽化システムの限界と事業継続リスクの顕在化
株式会社はとバス(以下、はとバス)では、長年にわたりバスの予約を管理するシステムとして「AS/400」を利用していました。安定稼働を続けていた一方で、消費税率変更などの法改正への対応や、新しいサービスを迅速に形にしたい場面では、システムの制約がその実現を妨げていました。
加えて、2010年代半ばには、AS/400を扱えるエンジニアの減少により、保守対応が特定の担当者に集中。属人化が進み、事業継続そのものにリスクが生じていました。
さらに、クローズドなシステム構造は新規事業の妨げとなり、多言語対応や新サービス連携も困難でした。当時進行していたインバウンド需要への対応や、2020年の東京オリンピックを見据えた新しい観光コース企画も、システムが足かせとなっていました。
そのような背景もあり、既存システムの延命ではなく、「オープンで柔軟なクラウド基盤への刷新」を決断することとなりました。
お話をうかがった株式会社はとバス 経営本部 経営戦略部 情報システム課の 千田 友也 課長。
公式キャラクターの「しゃぽぽ」と一緒に。
長年の信頼と“現場理解力”による伴走支援
刷新は単なるシステム更新ではなく、「業務の見直し」を含めた経営変革の一環として、複数社によるコンペを実施しました。
パートナー選定にあたり、はとバスが重視したのは、単なる開発力ではなく「業務を深く理解した上で、安定運用と変化対応を両立できる技術力」。具体的には以下の3点を重要な評価基準としました。
1.柔軟なコース設計と採算管理の実現
2.法改正や需要変化に柔軟に対応できるシステム構成
3.属人的運用からの脱却と持続的改善
DTSは過去に、はとバスで担当した予約管理基盤の再構築支援やWebシステム改修プロジェクトでの支援を通じて、システム要件の整理・品質改善・再構築を成功させた実績を持ち、同社の業務構造を熟知していました。
さらに、Azure・AWSの両クラウド基盤で多数の移行実績を有し、オンプレ資産をクラウドネイティブへ再構築するノウハウが選定の後押しとなりました。
提案内容は「未来志向の構成」。
長年の支援実績と業務理解に加え、「脱レガシーを実現するアプリケーション開発力」、「将来のシステム拡張を見越したスケーラブルなAzure構成」、そして「導入後の業務を熟知したDTSによるサポート体制」を提案。実績・柔軟性・対応力のすべてにおいて高い評価を獲得し、パートナーとして選定されました。
千田課長(右)とDTSプロジェクトメンバー(左)。システム刷新プロジェクトを共に振り返る。
IT化を支える基盤刷新を実現
30年以上にわたり運用してきた基幹システムの刷新は、当然大規模なプロジェクトとなりました。
本プロジェクトでは、基幹予約システムやWeb予約システムをはじめ、システムインフラ全体をAzure上へクラウド移行。東京オリンピックを目前に控えていた当時は、フェーズ1で外国人観光客向けコースに必要な機能を、フェーズ2で国内向けコースの機能を順次構築する計画としていました。
本プロジェクトは、経営層・現場・情報システム部門が連携する「ステアリングコミッティ」を設置し、少数精鋭による専任体制で毎日議論と検証を重ねながら進行。
DTSからは「このプロジェクトを成功に導くには、全員が共通の目的意識を持つことが不可欠」という指針が示され、プロジェクト全体が一丸となって取り組みました。
当初は「今までできたことができなくなるのでは?」という不安の声もありましたが、DTSのサポートにより、業務ルール等を可視化し、正しい運用にて業務を回す仕組みづくりが少しずつ定着。
このプロジェクトは、単なるシステム刷新にとどまらず、業務の可視化を実施する契機となりました。
変化に即応できる俊敏性を獲得
そして新システムは稼働を開始。しかし2020年、社会はコロナ禍に見舞われ東京オリンピックは延期。観光業界全体が大きな変化への対応を迫られました。そんな時に実施が決まったのが「Go To トラベルキャンペーン※」。同キャンペーンのへの対応に伴い、制度要件の変更が相次ぎ、そのたびに迅速なシステム改修を求められました。
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で落ち込んだ観光需要を喚起し、経済の再活性化を目的として日本政府が実施した観光支援策。
はとバスは法改正や需要変化に柔軟に対応できるシステムを構築していたことにより、短期間で改修と反映を実現。運用を止めることなく制度変更に対応することで、「クラウド移行していなければ業務を止めざるを得なかった」と言われるほどの俊敏な対応が可能に。
運用停止を伴わない改修が行える柔軟性が、事業継続の鍵となり、今後の経営を支える基盤となりました。
このプロジェクトを通じて、クラウド移行がもたらす柔軟性と俊敏性の価値が社内全体に浸透。
クラウド移行により運用面でのシステム変更に伴う制約が減少し、以前のAS/400では難しかった修正や追加対応にも柔軟に対応できるようになりました。
本プロジェクトは単なるシステム導入ではなく、人材育成と業務変革を一体で進めるIT化を進めるきっかけとなりました。
俊敏な仕組みが、利益構造と顧客体験を変革
システム改修の迅速化や運用効率の向上に加え、ビジネス面でもうれしい効果がありました。
Web予約数が電話予約数を逆転し、予約比率が「電話3: Web 7」に転換し業務効率と顧客体験の質が大きく変化しました。
さらに、入会手続きの利便性向上により、会員数は約2万人から約18万人へと9倍に増加。
クラウド基盤が「顧客接点とビジネススピードの両面を支える土台」となりました。
加えて顧客体験の面では、リアルタイム空席表示やスマートフォン対応の予約機能によって利便性が向上し、Web経由での予約が急増。
デジタル接点が広がったことで、メルマガや季節のキャンペーン、バースデークーポンなど、よりパーソナライズされた情報が配信できるようになり、顧客にとってもサービス利用の楽しみや利便性が向上しました。
俊敏な基盤が生み出した「スピード」「安定」「柔軟性」の3要素が、ビジネスアジリティと顧客満足度の向上を支えています。
東京駅前を走行する、はとバスの車両。変わらぬ信頼で東京観光を支え続ける。
データとAIで「変化に強い観光DX」へ
はとバスは現在、予約システムにとどまらず、他の業務領域でもクラウド移行を検討しています。
今年度の中期経営計画では、ITとDXのさらなる推進を全社の重点方針として掲げ、DXの推進により、日常的なサブ業務を効率化し、社員がより価値の高いコア業務に集中できる環境の実現、デジタルを基盤とした持続的な成長を目指しています。
はとバスは、今後もクラウド移行で得た俊敏性を武器に、「データを活かし、観光体験を設計するDX企業」として進化を続けます。
はとバスのシンボルである黄色いバスとともに。今後も信頼と技術を基盤に、共に挑戦を続けていく。