導入事例

ユニ・チャーム株式会社 様 アジア地域3カ国の基幹システムインフラをAWSに集約
SAPを迅速に安定稼働に導き
グローバルビジネスを加速

「Love Your Possibilities」を掲げ、不織布・吸収体事業を軸に共生社会を目指す

1961年に創業、1963年に生理用ナプキンの製造・販売を開始、以降、女性向け商品事業で躍進。積極的にグローバルな事業展開を行い、現在では世界約80の国と地域で事業を展開しています。育児・介護・家事など生活に密着したサポート企業として世界的に認知を広げる一方、SDGsに貢献する再資源化プロジェクトをはじめとするSDGs、共生社会の実現のための活動にも注力しています。「Love Your Possibilities」を合言葉に、2030年までに不織布・吸収体事業で世界一になる目標を掲げて邁進しているところです。

プロジェクトの背景

SAP基盤に利用中のクラウドが突然契約終了。信頼できる基盤への移行が急務に

ユニ・チャームは基幹システムとして2014年1月からSAP社のソリューションを採用し、日本本社(2014年)、タイ拠点(2016年)、インド拠点(2018年)に次々とSAP導入を進めていきました。その過程で出てきたのがSAP ECC 6.0のサポート終了(当初は2025年、やがて延長されて2027年)問題です。多くの企業は新バージョンのSAP S/4HANAへのバージョンアップを実施し、それを契機にインフラのクラウド移設を検討する企業も多く、ユニ・チャームも同様の戦略を検討しておりました。

問題が発生したのは、2019年のインドネシア拠点へのSAP S/4HANA導入プロジェクトにおいてでした。
SAP導入にあたって、システム基盤にはグローバルに基幹システム運用実績を持つ海外クラウド(A社)を採用し、2020年には日本のシステム基盤もA社のクラウドに移設しています。その後、タイ拠点とインド拠点で稼働中のSAP ECC 6.0システムのバージョンアップとクラウド化が計画されており、A社クラウドを活用してグローバルなSAP移行戦略はうまくいくと思われました。

ところが、2021年6月、A社が突然契約終了、日本撤退を言い出したのです。この戦略転換に巻き込まれ、A社クラウドを利用していたシステムは2022年1月までに他のクラウド基盤に移設せざるを得なくなりました。タイムリミットはほぼ6カ月。思わぬ難問が突きつけられ、他のクラウド基盤選定とシステム移設が喫緊の課題となりました。

今回お話をうかがったユニ・チャーム(DX推進本部 業務改革部)の 宮地 孝 部長。

ベンダー選定理由

要件を幅広くカバーし、他社よりも抜きんでた提案内容が高評価

宮地部長と本プロジェクトに関わったDTSメンバー

他のクラウド基盤への移設は大きなプロジェクトになります。パートナーとして複数のITベンダーが候補に挙がりました。ベンダー選定の重要な鍵となったのが各社の提案内容です。インフラ領域からアプリケーション領域まで27項目の比較表を作成し評価した結果、コスト面も含めて、総合的に最も高い評価を得たのがDTSの提案でした。
宮地部長は「比較表での優劣は重要な選定ポイントですが、長年インフラ運用管理を務めてきたDTSは必ずSoW(作業範囲記述書)に沿って納期や約束を守ってくれるという信頼感がありました。当社のシステムで移設経験もあり、課題解決能力が他社と比較して優秀でした」と振り返ります。
DTSが提案したのは、基盤としてAWSを利用する案でした。ユニ・チャームとしては他のクラウドサービスも選択肢にありましたが、宮地部長はDTSの提案内容を評価し、納得した上での導入となりました。

プロジェクトの概要

DTSの基盤環境理解と運用設計をもとにAWS MGNを利用した移設が実現

今回のプロジェクトでは、AWSの「AWS MGN(AWS Application Migration Service)」を利用しました。AWS MGNを採用した理由は、移行時のダウンタイムを最小限に抑えられる点にあります。
AWS MGNは、通常のビジネスオペレーションを継続しながら、AWS上に環境を複製(Replication)することが可能です。さらに、この複製はブロックレベルかつリアルタイムで行われるため、切り替え時間が大幅に短縮され、迅速に移行を完了することができます。

実際に、稼働停止からAWS上での稼働開始まで、1日もかからない移設を実現する見通しが立ちました。国内の本番環境では1日での移設が完了し、海外の環境についても移設台数と作業者数の関係で2日での移設を完了させることができました。
一方で、プロジェクトの中ではA社の運用管理環境についての課題が浮き彫りになりました。オペレーションの違いが発生し、結果として管理環境にばらつきが生じることに。
A社へ詳細な運用状況のヒアリングを試みましたが、必要な情報を得ることができず、運用設計の見直しやリスク管理の再検討を余儀なくされました。最終的に、A社の管理部分をDTSで巻き取る形で運用設計を再構築し、プロジェクトを進める運びとなりました。
DTS主体の移行設計、運用設計をもとに再構成された移設プロジェクトにより、トータルで半年間の期間延長にはなりましたが、2022年7月には本番稼働が開始できました。その後、タイ拠点(別の国内ベンダーが運用管理)、インド拠点(DTSが運用管理)も、インドネシアでの経験を生かしつつAWSを利用したSAP移行が行われ、その後のSAPバージョンアップもスムーズに運んでいました。

プロジェクトの効果

月額コストが4分の1程度に

長年の実績と信頼感も加わり、AWSを利用するというDTSの提案内容を高評価

アジア3カ国のSAPは、本番稼働して以降インフラ領域でのトラブルは生じておらず、安定稼働を続けています。また、かつての大手ICTベンダーのデータセンター内で運用していた時代に比べ、月額が4分の1程度に縮小する効果も出ています。

現在ユニ・チャーム各拠点ではSAP S/4HANA 2019から2021へのバージョンアップを進めています。各国拠点でバージョンが統一できると、日本および海外拠点のAWS+SAP基幹システムが単一のインスタンス(1台の仮想サーバー)に統合できる可能性があります。システム全体は拡張していてもシンプルな情報集約・処理が可能になり、グローバルでリアルタイムな情報把握が実現して、さらにビジネスを飛躍させることを期待します。

それも基盤の高信頼性、可用性があればこそ。それを支えるのはAWSの管理機能と、それを活用する運用管理エンジニアです。
AWSには定常業務を自動化して確実に遂行する機能や、異常検知・担当ベンダーへの通知機能など、さまざまな管理機能が備えられていて、国をまたいで利用されるシステムであっても一元的に運用管理が可能になるメリットがあります。AWSへの移設に際しては「Amazon CloudWatch」をはじめとするAWSのサービスを組み合わせて、電話やメールによる迅速な自動通知を実現しています。ただし、通知内容などから対応を適切に判断するのには専門知識とノウハウが必要です。運用管理アウトソーサーとしてのDTSは、ユニ・チャームの世界戦略を下支えする大切な役目を担っています。

宮地部長は次のように述べています。「AWS上に構築されたインフラやシステムでは全体的に異常検知がしやすくなったと感じています。日本、インドネシア、インドの拠点はDTSが構築時から関わり経験値が高く、共通の障害対応もしやすくなって業務がスピーディになっています。インフラ領域はこれで最適化できたのではないかと考えています。当社のIT人員が少ないなかで、これだけの規模のシステムを安定稼働しているのは、DTSが総合的に支援してくれているおかげです」。

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