AWSを金融機関が導入した事例と活用によるメリットを解説

AmazonのクラウドサービスAWS(Amazon Web Services)は、高いセキュリティ性能と拡張性に優れていることから、信用性を重視する日本の金融機関においても多く利用されています。アメリカの調査会社によると、AWSは2023年第2四半期で最もシェアの高いクラウドサービスです。
本記事では、AWSの導入メリットを解説したうえで、金融機関が活用する際のケーススタディを紹介します。現行システムをオンプレミスから移行したいと考えている方は、参考にしてみてください。

AWSを導入するメリット

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AWSを導入するメリットは主に次の3点です。
⦁ セキュリティ性能が高い
⦁ バックアップ・BCP対策になる
⦁ 拡張・開発の速度が上がる
では、それぞれ順番に見ていきましょう。

●セキュリティ性能が高い

AWSは多くの金融機関や神戸市などの官公庁でも利用されるほど、セキュリティ性能が高く信頼されています。
近年サイバー攻撃が活発化する中で、セキュリティ性能はとても大切です。警察庁が公表しているデータによると、サイバー犯罪の件数は過去5年間で増加の一途をたどっています。特に資産に関する情報を扱う金融機関において、顧客情報の管理は重要です。
AWSは、多数の第三者認証やフレームワークへの準拠を行っているため、高い安全性を誇っています。セキュリティ管理規格のISMS(ISO27001)の取得や、CSAのSTARレベル3相当のツール、FISC安全対策基準への準拠など多数のコンプライアンスプログラムにより、堅牢なセキュリティを確保しています。

●バックアップ・BCP対策になる

AWSのグローバルな拠点を活かして、バックアップ・BCP対策が可能です。
クラウドサーバーを利用すれば、自然災害やサイバー攻撃が発生し、自社で保有しているデータを喪失してしまっても、AWSに保存しているデータは守られます。物理サーバーを使ってBCP対策を講じることも可能ですが、サーバーの購入・設計などにかかる費用や工数が大きく膨らんでしまいます。
AWSは世界中にデータセンターを配置して、拠点を広げています。また、各拠点は完全に独立しているため、1つの拠点にトラブルが発生しても他の拠点に影響を及ぼしません。AWSを利用したBCP対策は、金融機関に限らず多くの企業で導入されています。

●拡張・開発の速度が上がる

AWSでは、簡単な操作ですばやくサーバー台数の増減ができるため、ユーザーのニーズに合わせた柔軟なサービス提供が可能です。
オンプレミスでは、サーバーを追加購入しなければ拡張ができないため、ユーザーのニーズを取りこぼしてしまう可能性があります。また、追加購入したサーバーが不要になっても簡単に縮小できず、コストを払い続けなければなりません。
AWSは、日中と夜間といった細かい単位でもサーバーのスペック変更が行えるため、無駄なコストの発生やビジネスの機会損失を防ぎ、最適な環境を実現します。他にも、突発的にユーザーが増えた場合であっても、あらかじめ定められた値を超えた際に自動でサーバーリソースを増強できるため、手動での管理に比べタイムリーな調整が可能になります。

AWSを導入するデメリット

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AWSを利用する際のデメリットについて解説します。
AWSはとても便利なクラウドサービスですが、導入する際には次の点に留意してください。
⦁ 従量課金制のためコスト管理が必要
⦁ カスタマイズの自由度が低い
それぞれ詳しく解説します。

●従量課金制のためコスト管理が必要

AWSの料金形態は、使用量に応じて変動する従量課金制です。固定料金制ではないため無駄が生じにくいメリットはありますが、利用量を管理せずに使い続けると、思わぬ請求が発生してしまいます。想定外のコストを防ぐためには、利用するサービスの見直しや、AWSに割く毎月の予算額を決めておくなどの対応が必要です。
そのためには、請求ダッシュボードの定期的な確認や、請求アラーム機能の利用がおすすめです。請求ダッシュボードでは、サービス利用量の概要や内訳が確認できるため、見直しに役立ちます。請求アラーム機能では、請求額が設定値を超えたときにメールなどでお知らせしてくれるように設定できるため、予算額の管理に便利です。

●カスタマイズの自由度が低い

AWSは多くの企業に提供されるパブリッククラウドであるため、セキュリティ性能の高さや豊富なサービスがメリットである反面、カスタマイズの自由度は低いものになっています。独自の運用体制に合わせた調整や、細かい単位でのリソースの増減が難しく、もどかしさを感じる場面もあるでしょう。
また、AWSには不定期でのメンテナンス実施が設定されており、その実施中はシステムの停止が必要とされる場合もあります。メンテナンスの日時については、事前にAWSから通知されるため、業務時間の変更などメンテナンス時の運用を事前に決めておく必要があります。
運用における自由度をとにかく優先したいのであれば、オンプレミスでの運用も検討してみるとよいでしょう。

AWSを金融機関が導入したケーススタディ

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最後に、AWSを金融機関が運用する際の具体的な運用イメージについて、ケーススタディとして紹介します。メリットとして解説した高いセキュリティやBCP対策の実現に、AWSが大きく貢献していることが理解いただけるはずです。

●その1:DX化を推進した高いセキュリティ性能

高いセキュリティ性能を生かした顧客情報の管理、そしてビッグデータの分析に、AWSを大いに活用できます。
オンプレミスでは、多くの場合において部門ごとにシステム構築されており、顧客情報が点在しているためビッグデータの分析が効率的に行えない、という状態になっています。たとえば、AWSが提供するデータレイク(Amazon S3)と、データウェアハウス(Amazon Redshift)、BIツール(Amazon QuickSight)の3つを活用したプラットフォームを構築し、顧客情報をAWS上で一元管理することによって、膨大なデータの蓄積とセキュアな利活用が可能になります。
また、AWSの導入で既存システムの統合と、クラウドサービスへのデータ移行ができるため、DX化の推進にも寄与します。

●その2:マルチリージョン化によるバックアップ・BCP対策の実現

AWSのグローバルな拠点網を活かした、マルチリージョン化によるバックアップやBCP対策が可能です。
日本においても東京と大阪に拠点が存在するため、国内2拠点を利用したBCP対策が講じられます。たとえば、東京でシステムトラブルや異常が検知された際には、Amazon EventBridgeやAWS Lambdaによる自動切り替え、Amazon Aurora Global Databaseのレプリケーション機能によって大阪のシステムが稼働するため、システムを停止させる必要がなくなります。
万が一の事態があっても、顧客が安心して利用できる環境づくりにAWSが大きく貢献します。

●その3:既存システムの大半をAWS上へ移行

AWSに社内システムを移行すれば、サーバーの保守管理にかかる手間やコストが削減できます。
オンプレミスでは、物理サーバーの設置場所や拡張・縮小の検討、保守管理など、さまざまなコストが発生します。
AWSにはVDI(Amazon WorkSpaces)など幅広いサービスがあるため、現在運用しているシステムの多くを移行・置換できます。これによって、インフラ担当者のリソースが空き、各部門からのニーズへのスピーディな対応が可能になります。

まとめ

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今回は、金融機関がAWSを活用するメリットやケーススタディについて解説しました。
AWSは、BCP対策やセキュリティ性能など、金融機関にとって役立つ機能を豊富に備えています。すでに日本の多くの金融機関でAWSは導入されており、DX推進の流れから今後も利用する企業や自治体が増えると見込まれます。
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