AWSによるクラウドマイグレーションとは?
方法とメリットを解説

多くの企業が、自社の業務サーバーをクラウドに移行する「クラウドマイグレーション」を進めています。
その際に使用するクラウドサービスの選択肢として広く知られるのが「AWS(Amazon Web Services)」です。
今回は、クラウドマイグレーションやAWSといった用語の説明とともに、AWSを使ってクラウドマイグレーションを行うメリットや、AWSを使用する際の注意点などについて解説します。

クラウドマイグレーションとは?オンプレミスからの移行効果

はじめに、マイグレーション(migration)とは、日本語で「移動・移転・移住・乗換」といった意味をもつ英単語。クラウドマイグレーションとは、企業が業務で使っているシステムの環境を、物理的なサーバーからインターネット上で構築された仮想のクラウドサーバーに移すことを意味します。
これまでは多くの企業が、自社が管理するビルやデータセンターにサーバーを設置し、そのなかで業務システムを動かす「オンプレミス」という方式を採用していました。これをクラウド環境にマイグレーションすることで、物理サーバーの保守点検などのコストを削減できます。物理サーバーのように老朽化もしないため、メンテナンスや買い替えは必要ありません。また、オンプレミスに比べてクラウドの方が利便性にも優れ、リモートワークで従業員同士が業務データの共有をする際にも適しています。
クラウドマイグレーションを行う際は、クラウドサービスを使ってシステムを構築する必要があり、今回解説するAWSの他には、「Microsoft Azure」や「Google Cloud Platform(GCP)」などがあります。

AWSとは

「AWS」は、ネットショップの事業展開で知られるAmazonが提供する、世界シェアトップクラスのクラウドサービスです。仮想化技術によってCPUやメモリ、ストレージなどのデジタルインフラをインターネット経由で提供するサービス。2006年にサービス提供が開始されてから、急速にシェアを拡大していきました。

クラウドマイグレーションでAWSを選択するメリット

クラウドマイグレーションでAWSを選択するメリットクラウドマイグレーションで、各社が提供するパブリッククラウドのなかからAWSを選択するメリットについて、6つのポイントを順番に解説していきます。

●世界シェアNo.1の安心感

まずは、なんといっても世界シェアNo.1のサービスとして安心感が得られます。調査会社「Synergy Research Group」と「Canalys」の報告によると、IaaSを含むクラウドインフラのグローバルにおける市場シェアについて、2023年第1四半期時点でGoogle Cloud Platform(GCP)が10 %、Microsoft Azureが23%であるのに対し、AWSが32%で1位という結果になっています。 国内でも任天堂や東京海上日動火災保険、JR東日本、スターバックスジャパンといった大手企業のほか、静岡県浜松市などの自治体でも活用されています。多くの実績・事例があり、自社で導入を検討する際も経営層に説明しやすく、導入後の使い方もイメージしやすいでしょう。

●初期費用がかからない

初期費用がかからない点もAWSを選択することで得られるメリットの一つです。クラウドマイグレーションの際は、運用の検討や社内への周知など、管理者の人的コストがかかります。そのなかで、クラウドサービスそのものの初期費用が発生しないことは、導入のしやすさにつながるでしょう。ちなみに、導入後の料金形態についてはMicrosoft AzureやGoogle Cloud Platform(GCP)と同様ですが、通信量を使用した分だけ支払う従量課金制です。

●継続的な値下げが期待できる

「AWS」は2006年にサービスを開始以降、2023年3月までに129回以上の値下げを実施してきました。円安の影響でAWSのコストが増えたと感じているユーザーもいるかもしれませんが、料金単価は下がり続けています。AWSは提供地域を拡大する際、サーバーなどの機器を大量購入して一般企業よりも安く調達することで、その分ユーザーへの利益還元として値下げを実現しているようです。

●拡張性に優れ、最新に技術を追加できる

「AWS」はサーバー環境構築やデータストレージ、データベース、コンテンツ配信、AI・データ分析、ワークフロー管理、開発環境、メール、セキュリティ対策など、200を超えるサービスを提供しています。その9割以上は全世界のユーザーからのリクエストに応じるかたちで開発されました 。拡張に優れ、今後も市場のニーズに合わせ、最新の技術を取り入れた機能追加が期待できます。各種サービスを組み合わせて使うことで、オンプレミスで構築した多機能かつ大容量の業務基幹システムもAWSに置き換えてマイグレーションが可能です。

●物理基盤のメンテナンスが不要になる

これはAWSに限ったことではなくMicrosoft AzureやGoogle Cloud Platform(GCP)も同様ですが、クラウドマイグレーションを行うことで、オンプレミス環境では必須となる物理サーバーを手放すことができ、保守メンテナンスも不要になります。物理サーバーをデーターセンターで管理している場合、毎月発生するラックの利用料といったコストもカットできます。

●障害に強いシステム構築が可能

AWSは全世界に25ヶ所以上のリージョン(データセンターの所在地)があり、日本国内には東京と大阪の2ヶ所があります。各リージョンがバックアップを備えたネットワークで接続され、災害の発生時でも迅速にシステムを復旧させるための対策がなされています。

AWSでクラウドマイグレーションするときの注意点

AWSでクラウドマイグレーションするときの注意点クラウドマイグレーションを検討するときの有力な選択肢となるAWSですが、注意しなければならない点もいくつかあります。ここでは4つのポイントを解説します。

●毎月の利用料が変動する

AWSは、利用料が「従量課金制」のため、毎月サービスを使った分だけ費用が発生し、月ごとに変動します。定額だと年間にかかるコストの見込みが立ち、予算の確保もしやすいですが、従量課金制の場合は予測が難しくなります。例えば、利用者が拡大したり想定外の活用をされたりすることで費用が増大してしまう可能性もあるので、事業利益とのバランスを見ながら利用者や活用方法を考え、常に状況を把握する必要があります。

●使いこなすには専門知識が必要

AWSでクラウドマイグレーションを行うためには、ハードウェアやサーバー、ネットワークなどに関する専門知識が必要です。誰でも簡単に使えるというものではなく、社内に専門知識を有するエンジニアがいないと自社での構築は難しいでしょう。そのため、AWSに特化したベンダーに構築や保守を依頼するケースは少なくありません。その場合、前述の通りAWS導入の初期費用はかからないものの、ベンダーによる構築・保守費用が発生します。

●サービスに自社の運用を合わせなければならない場合がある

オンプレミスの方式では、自社の事業内容や組織形態、業務フローに合わせて最適な環境を構築できました。それに対し、AWSは提供しているサービスこそ多岐にわたるものの、自社の理想的な運用を完璧に実現できるとは限りません。利用するサービスの考え方に合わせて運用や業務フローそのものを見直さなければならない場合もあります。

●ダウンタイムに注意する必要がある

AWSでは、定期的なメンテナンスが実施されます。そのなかで、システムやサービスが停止、または中断する「ダウンタイム」が発生する場合もあります。また、故障により突発的なダウンタイムが発生することもあります。オンプレミスの方式では、自社のタイミングに合わせてメンテナンスを行えますが、AWSでクラウドマイグレーションをする場合、システム構成を冗長化させ、メンテナンス影響を最小化させるなど、設計時に考慮することが重要です。

まとめ

今回はAWSを用いたクラウドマイグレーションのメリットや注意点などについて解説しました。
AWSは世界トップシェアのクラウドサービスで安心感があり、初期費用不要・継続的な値下げといったコストメリットや、優れた拡張性、物理基板のメンテナンスが不要になるなど、非常に有用なサービスです。
一方で、従量課金性により予算の見込みが立てづらいことや構築・運用には専門知識が必要なことなど、導入のハードルもあります。クラウドマイグレーションを検討する際は、自社の現状のシステム環境を整理したうえで、課題解決に最適なサービスを選択しましょう。

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