組織やシステムの「サイロ化」が起こる原因と対応策とは?
「サイロ化」とは、組織やシステムなどが全体と連携できず、効率的に機能していない状態を指します。事業や組織を運営するにあたって、サイロ化に対応する必要があるのは、サイロ化が生産性を低下させるリスクがあるためです。ここでは、サイロ化の意味とその原因、対応策についてお伝えします。
サイロ化とは?
サイロ化とは、組織や業務プロセスなどが個別や独自に機能し、全体との連携が図れない状態を指します。サイロ(silo)は、もともと工業向けの原料や畜産用飼料などを大量に貯蔵しておくための円柱型の建造物ですが、その高い密閉性が転じて、縦割り組織や情報の閉鎖性を表すようになりました。「タコツボ化」ともいわれます。
組織やシステムで起こるサイロ化
例えば、組織や業務プロセス、システム、データなど、サイロ化はさまざまな場面で起こります。いずれの場合も機能上の連携や情報共有などが図れないことにより、業務スピードやクオリティ、コストなどの点で効率が低下し、結果として顧客満足度を損なったり、顧客離れが起こったりするリスクがあります。とりわけ大きな組織で起こりがちです。
同一企業内の拠点や部署などがサイロ化すると、他拠点や部署との連携が取りにくくなります。同じ顧客や製品、サービスなどについてのデータをそれぞれに持ち、互いのものを見ることができない状態です。その都度照会の依頼が必要だったり、得た情報がすでに最新情報ではなかったりなど、機能上の問題が生じています。
サイロ化の原因
サイロ化の原因はひとつではありません。ある部署とまた別の部署に導入されたシステムが予算の関係で別物だったり、時期や業者が異なっていたりというように、個別最適を重ねた結果だということも珍しくありません。
そのほかにも縦割りの組織体系や組織の統廃合、システムの構築・見直しに対応できるIT人材の不足により、対応が組織改編に追いつかないこともサイロ化を進めてしまうでしょう。また、独立採算性が企業内競争を激しくさせ、ノウハウなどの共有を好まないようにしているのではないかともいわれています。
サイロ化を解消するメリット
サイロ化の対応を後回しにするリスクと、解消するメリットを確認しておきましょう。
全社でのデータ共有と活用
データ共有面でのリスクには、情報が行き渡りにくい、情報伝達にタイムラグがある、顧客・製品情報などのデータが散在するなどがあります。例えば、同一顧客の購入歴や問い合わせ履歴、過去に起こしてしまった失敗などがリアルタイムで全社に共有されず、部署や担当者によって対応にバラつきや重複が発生する可能性があります。
解消すればデータの統合・集約はもちろんのこと、情報共有、情報共有による新アイデアやイノベーションの創造が期待できます。また、一元管理されている最新情報をすべての社員が閲覧できれば、参照する情報の齟齬がなくなり対応の精度が上がります。
業務効率化
業務効率の点では、無駄な作業や部署間で重複するタスクに費やすコストが挙げられます。限られた労力や時間、費用といったリソースの浪費を重ねてしまっているといっていいでしょう。具体的には、部署ごとに存在する帳票類や経費精算方法の違い、他部署でも行っていると分かっていながら廃止できない同一業務などです。
しかし、サイロ化が解消できれば、帳票類や運用ルールの統一をはじめとして、ノウハウの共有、業務プロセスの全体最適化、全社共通のプラットフォーム上で各部署が連携可能になるなど、生産性の向上につながります。
システム運用管理コストの低減
システムが古くなるにつれて、システムの運用管理コストは増加する傾向にあります。市場競争で技術や製品が淘汰されれば、それを取り扱っている技術者も少なくなり人材確保が難しくなりますし、サポート期限を過ぎた製品は動作保証外となるでしょう。
サイロ化を解消することで、各部署のシステム運用管理作業とコストの削減が可能です。システム運用管理において、属人化・ブラックボックス化していた作業の解消にも役立ちます。
意思決定のスピードアップ
必要な情報の収集に時間を要して意思決定が遅くなることは、意思決定プロセスにおけるサイロ化のリスクです。スピーディーな対応が求められる局面では、意思決定に必要な情報を迅速かつ正確に集めることが重要になります。
部署ごとにデータがサイロ化していると、常に更新して最新情報が保たれているのか分からず、多くの場合、ほかのシステムとのデータ互換性がありません。サイロ化を解消することで素早く経営課題の把握や判断を行えるようになります。
顧客満足度の向上
サイロ化による連携不足や情報の散在は、顧客対応の遅さや顧客ニーズにマッチしない対応などにつながります。ひいては顧客満足度の低下を引き起こしかねません。伝言が共有されていない、同じような確認が度々ある、対応や提案に時間がかかるなどは代表例といえます。
サイロ化を解消できれば、顧客ニーズに迅速かつ適切に対応できるようになり、顧客満足度の向上につながります。購入履歴や頻度などに応じたタイムリーな提案によって、良好な関係の構築や優良顧客へと発展することが期待できるでしょう。
サイロ化を解消する方法
サイロ化のリスクと解消のメリットを確認したところで、サイロ化を解消する方法を見ていきましょう。主に3つの方法があります。
IT戦略の共有
DXという大きな時代の流れの中で、どの企業にとっても将来を見据えたIT戦略を持つことは非常に重要です。顧客データやデジタルツールの活用が、どのように事業の成果に影響するか全社で共有しましょう。
戦略に基づかない成功は、偶然で終わってしまう可能性が否めません。IT戦略の中でしっかりとサイロ化の解消を掲げ、その先に成果があることを伝えましょう。
社内コミュニケーションの活性化
サイロ化の解消には、組織改編やプロジェクトチームの結成が有効です。縦割り組織の意識が強いようなら、組織改編という方法があります。サイロ化解消のためのプロジェクトチームを発足させる場合、できる限り多くの部署から人材を集めましょう。自分ごとだという意識を持ってもらうことからスタートすることが重要です。
他部署の業務を知ることに加えて、部署間の業務連携の重要性を理解してもらうため、社内コミュニケーションを活性化することもおすすめします。プロジェクトチームのような業務に限らず、社内イベントの開催など気軽に交流できる雰囲気作りも大切にしましょう。
新システムやアプリケーションの導入
IT戦略の共有や社内コミュニケーションの活性化は、サイロ化の解消に間接的な効果が期待できる方法ですが、新システムやアプリケーションの導入は、サイロ化解消に直接働きかける方法です。
コストを投じて新システムを導入するからには、業務上の課題改善に応えるものでなければなりません。従来の業務プロセスの見直しや無駄な業務の撤廃など、効率的に業務を行うための準備が求められます。
自社にサイロ化がある場合は、早めの解消を
サイロ化とは、情報の分断や社内の連携が取れていないことを指します。もし自社内にサイロ化している組織や部署、業務プロセスなどがある場合、なるべく早めに対応しなければなりません。サイロ化を見過ごしていると、業務の遂行や事業を展開する上でのリスクが高まってしまうでしょう。
しかし、硬直していた組織体系や孤立していた業務プロセスが改善されると、情報共有はもちろんのこと、業務効率化やコスト低減など、会社全体にとってのメリットがもたらされます。ServiceNowなどのような業務改革ソリューションツールを用いて、ぜひサイロ化解消を実現してください。