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ServiceNowが拓く、AIワークフローの新時代

近年、AI技術は目覚ましい進化を遂げ、ビジネス環境に革命的な変化をもたらしています。

 

特にServiceNowにおいては、従来のスクリプト型ワークフローから予測型、会話型へと進化し、2024年には生成AI(Generative AI)を搭載した「Now Assist」が登場しました。

 

さらに2025年には、Agentic AI(自律型AI)である「AI Agents」が加わり、AIが人の代わりに業務を実行する「Agentic Workflow」が実現されつつあります。

 

本記事ではAIの進化の過程と、ServiceNowが実現する、AIを用いたワークフローの今後の展望について解説します。

生成AI(Generative AI)とは?従来のAIとの違い

生成AIは、従来のAIとは一線を画す、新たなコンテンツ創造能力を持つAIです。
本章では、従来のAIと生成AIの違いや、仕組みについて詳しく解説します。

従来のAIの役割

従来のAIは、過去の膨大なデータを学習し、そのデータパターンに基づいて適切な解答を推論することを主な役割としていました。

例えば、既存のデータから最適な選択肢を導き出したり、予測を行ったりする能力に長けています。

生成AIの登場

これに対し、生成AIは過去のデータを基盤としつつも、人間のように「0から1」を創造する能力を持っています。

これにより、テキスト、画像、音声、動画など、これまでにない新しいコンテンツを自律的に生成することが可能になりました。

AI技術の進化における生成AIの位置づけ

AI技術の進化において、生成AIは「機械学習(Machine Learning)」や「深層学習(Deep Learning)」のさらに上位に位置付けられます。

深層学習が複雑なパターン認識を可能にした一方で、生成AIはその能力を応用し、より高度な創造性を実現する技術として注目されています。

生成AIの基本的な仕組み

生成AIの基本的な仕組みは、主に以下の要素で構成されます。

 

  • ユーザー(User):AIに何かを依頼する人間を指す。
  • プロンプト(Prompt):ユーザーがAIに対して指示や質問を与えるテキストのことです。生成AIは、このプロンプトの内容を解釈し、何を生成すべきかを理解。
  • データ(Data):AIが学習した膨大な情報のこと。このデータからAIは知識を記憶し、知識化する。
  • モデル(Model):学習されたデータを基に、プロンプトに応じて新たなコンテンツを生成するAIの中核となる部分。
  • 生成されるデータ:モデルによって生成されるアウトプットで、テキスト、画像、音声など、様々な形式が存在。

LLM(大規模言語モデル)の解説

LLM(Large Language Models)は、大規模な「データ量」「計算量」「パラメータ数」を特徴とする、極めて精度の高い言語に特化したモデルです。

  • データ量:AIが学習する情報の量。大規模であるほど、より多くの知識とパターンを習得。
  • 計算量:コンピュータが情報を処理する能力。膨大な計算量によって複雑なタスクを実行。
  • パラメータ数:AIが確率計算を行う際の係数の集合体。この数が豊富であるほど、モデルの表現力と精度が高まる。

代表的なLLMには、OpenAIの「ChatGPT(GPT-4oなど)」やGoogleの「Gemini(旧Google Bard、Gemini Nano/Pro/Ultraなど)」があります。

ServiceNowの「Now Assist」が実現する生成AI機能群

 

ServiceNowの「Now Assist」は、ServiceNowプラットフォーム上で利用できる生成AI機能の総称であり、多様なユーザーの生産性向上と業務効率化を支援する機能です。

Now Assistとは

Now Assistは、ServiceNowプラットフォーム上で利用できる生成AI機能の総称です。これは単一の機能ではなく、ServiceNowの各製品やユーザーの役割に応じて最適化された、多様な生成AIスキル(Now Assist Skill)の集合体として提供されています。

 

Now Assistは、ServiceNow独自の大規模言語モデルである「Now LLM」を主に使用していますが、開発時にはOpenAIやGoogle Cloud AIなどのサードパーティ製LLMも利用可能です。これにより、お客様の業務領域に合わせた柔軟なAI活用が可能となります。

 

各役割におけるNow Assistの価値

▼サービス担当者(サービスデスク・カスタマーサポート等)向け

 

Now Assistは、サービス担当者の生産性向上と複雑な作業の迅速化をサポートします。具体的な機能としては、以下のようなものがあります。

 

  • ケース/インシデント要約:顧客からの問い合わせやインシデントの内容をAIが自動で要約し、エージェントが迅速に状況を把握できるようにし、対応時間を短縮。
  • チャット要約:顧客とのチャット履歴が長くなった場合でも、担当者が会話のポイントをすぐに把握できるようにAIがその内容を簡潔に要約。
  • ナレッジ生成:過去の解決事例や対応記録から、FAQやナレッジベースの記事を自動で生成し、ナレッジ作成の手間を削減、情報共有を促進。
  • 解決メモの生成:インシデント解決後に、その対応内容や解決策を自動で記録し、解決メモを作成。
  • メール返信推奨:顧客からのメールに対して、AIが内容を分析し、適切な返信文案を提案。これにより、エージェントは迅速かつ質の高い返信が可能。

 

▼ 開発者・管理者向け

 

開発者や管理者にとって、Now Assistはアプリケーション開発の簡素化と迅速化をサポートします。具体的な機能としては、以下のようなものがあります。

  • テキストからのコード生成 : 自然言語で指示するだけで、AIが自動的にプログラミングコードを生成し、開発者のコーディング作業の負担を軽減。
  • テキストからのアプリ生成:テキストでの指示に基づいて、ServiceNowプラットフォーム上で動作するアプリケーションの骨格を自動生成し、アプリ開発の初期段階の工数を削減。
  • テキストからのダッシュボード生成:必要な情報や表示形式をテキストで指定するだけで、AIが最適なダッシュボードを自動で作成。

 

▼ 従業員・顧客(エンドユーザー)向け

 

従業員や顧客(エンドユーザー)向けには、セルフサービスによる自己解決の促進とユーザー満足度の向上に貢献します。具体的な機能としては、以下のようなものがあります。

 

  • 検索の効率化:AI検索機能において、ユーザーがより自然な言葉で検索クエリを入力できるようになり、AIが関連性の高い情報を迅速に提供。
  • 生成AIを活用したVirtual Agent:従来のチャットボットが持つ機能に加え、生成AIの能力を活用することで、より複雑な問い合わせにも自然言語で対応し、高度な自己解決を支援。
  • スケジュールアシスト:会議やイベントのスケジュール調整において、AIが参加者の空き時間などを考慮し、最適な候補日時を提案。

このように、Now AssistはServiceNowプラットフォーム上で、様々なユーザーが生成AIの恩恵を享受できるよう、幅広い機能を提供しています。これにより、企業全体の生産性向上と顧客体験の向上を実現します。

 

Agentic AI(自律型AI) とServiceNow AI Agentsの展望

 

Agentic AIは、ServiceNowのワークフローを次のレベルへと進化させ、ビジネスにおけるAI活用をさらに促進させます。 

Agentic AIとは

Agentic AIは、AIが自律的にタスクを遂行し、人間はそのプロセスを監督するという、新しい業務のあり方を指します。

 

従来の生成AIが、依頼に対して単に提案や回答を生成するのに対し、Agentic AIは自ら計画を立て、人の代わりに、より複雑なタスクを自律的に実行できるという点で大きく異なるでしょう。

 

具体的には、ユーザーからのリクエストを受け取ると、AIがWeb検索、データベース検索、APIタスク実行、監視・学習といった多様なステップを自ら実行します。

 

必要に応じて人間の確認を挟みながら、最終的な目標達成を目指すことができるため、この自律的な実行能力は、ビジネスプロセスの自動化を次のレベルへと引き上げることが可能です。

ServiceNow AI Agentsの仕組みと役割

ServiceNow AI Agentsは、このAgentic AIの概念をServiceNowプラットフォーム上で実現するものです。

 

その最大の特徴は、単なる汎用的なAIではなく、企業が持つ独自のデータやワークフロー、ナレッジベース、そして個々のユーザーの業務領域を深く理解する点です。

 

ServiceNow AI Agentの基本的な仕組みは以下のとおりです。

 

  • Requester(リクエスター):AI Agentに依頼を行うユーザーやシステム。
  • AI Agent Orchestrator(オーケストレーター):AI Agentの中心的な役割を担い、リクエスターからの依頼を受け、実行計画を立て、適切なAI Agentやツール、ワークフローを調整・実行。
  • AI Agent:特定の業務領域やタスクに特化した自律型AI。例えば、ITSMやCSM、HRSDなど、ServiceNowの各製品領域に特化したAI Agentが存在し、それぞれが専門的な業務知識と実行能力を持つ。
  • Tools(ツール):AI Agentがタスクを実行するために利用する外部システムやServiceNowプラットフォーム内の機能。これにはWeb検索、API実行、データベースアクセスなどを含む。
  • Workflows(ワークフロー):ServiceNowプラットフォーム上で定義された既存のワークフロー。AI Agentは、これらのワークフローと連携、自動化されたプロセスをトリガーし、その一部として機能。
  • Information(情報)/Skills(スキル):ナレッジベース(KB)や構成管理データベース(CMDB)、ユーザー情報など、AI Agentが参照する情報源や、Now Assist Skillなどの生成AI機能群。

 

ServiceNow AI Agentsは、インシデント解決、顧客サポート、従業員オンボーディングなど、多様な業務プロセスにおいて、人間の介入を最小限に抑えながら、自律的に、迅速かつ正確な業務遂行を可能にします。

 

企業はこれまでAIでは自動化が困難だった複雑な業務にもServiceNow AI Agentsを取り入れることで、大幅な効率化と生産性向上が期待できます。

 

まとめ

AI技術は近年大きく進化を遂げました。また、それはServiceNowにおいても同じことが言えます。

 

生成AI「Now Assist」による業務支援、そしてAgentic AI「ServiceNow AI Agents」による自律的なタスク実行は、企業のデジタル変革や、競争力を強化するための強力なツールとなります。

 

ServiceNowは、AIとワークフローの融合を通じて、これからのビジネスにおけるAI活用の重要性を高め、その貢献は今後さらに大きくなっていくでしょう。

 

ServiceNowのAIワークフロー導入をご検討の際は、ぜひお気軽に株式会社DTSまでご相談ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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