導入サービス
SAP S/4HANA® Cloud Public Edtion


業種
IT

株式会社 DTS
SAP S/4HANA® Cloud導入による
全社標準化と業務改革の軌跡
データを活用し、いかに競争力や生産性向上を図るか。実現に向けシステムのモダナイゼーションが求められます。独立系システムインテグレーターのDTSでは、DXによる業務改革、リファレンスモデルの確立を目指し、既存基幹システムを刷新。クラウドERPソリューションSAP S/4HANA Cloud Public Edition(以下、SAP S/4HANA Cloud)を採用した理由は、事業の変化への柔軟な対応を目的に業務をサービスの標準に合わせるためです。2025年4月に新基幹システムが本稼働。データドリブン経営へ大きく一歩踏み出しました。
As is
課題
- DXによる業務改革、データドリブン経営のリファレンスモデルを実現したい
- Fit to Standardを実現し、事業の変化に柔軟に対応したい
- レガシーシステム、データサイロ化、属人化から脱却したい
To be
効果
- SAP S/4HANA Cloudを導入し基幹システムを刷新。
全社データの一元管理を実現し、データドリブン経営実現に向けて大きく前進 - グローバルスタンダードのSAP S/4HANA Cloudの標準に業務を徹底的に合わせることで、業務改革、アドオン開発の最小化を実現、社内システムの更改対応を効率化
導入の背景
「ありたい姿」実現のための業務改革
分野を問わず、多くの企業が「将来のありたい姿」に向けて変革に取り組んでいます。市場環境の変化や、技術革新の進化に応え、成長を続けていくためです。既存基幹システムを刷新し、いかに持続可能なIT基盤にシフトしていくか。生成AI活用、データドリブン経営は、硬直したレガシーシステムでは対応できません。1972年創業、50年以上にわたり、独立系システムインテグレーターとして成長を続けてきたDTSも、例外ではありません。
DTSは、金融、通信、公共、小売・流通、製造業など様々な業界・業種に対し、コンサルティングから開発、運用、保守までトータルソリューションサービスを提供しています。独立系システムインテグレーターの強みを生かし、お客様の課題に対し真摯に向き合い解決を支援してきました。お客様との信頼関係は、創業以来黒字経営を続けてきたことにもあらわれています。同社は2022年に、新中長期計画「Vision2030」を策定。2030年に「ありたい姿」は「期待を超える価値を提供するためにチャレンジする企業」です。
「ありたい姿」を実現するために、既存基幹システムの刷新に着手。従来の課題について、DTS 情報システム部 業務改革推進担当 担当課長 内山一弘氏は振り返ります。「既存基幹システムは、スクラッチで当社業務に合わせてつくりこんでいました。使いやすい反面、膨大なシステムが複雑にからみあい、全体把握が難しい状況でした。組織変更や業務改善などの変化に対し、影響範囲の調査や、改修に多くの手間と時間を要するなど、拡張性、保守性に関して様々な課題がありました。また、Excelベースの業務における属人化、ブラックボックス化、部分最適によるデータのサイロ化が進んでおり、部門横断的なデータ活用が進んでいませんでした。結果として事業の機動性に影響が出ておりました。」
DTSにおいて、複雑化した基幹システムからの脱却は継続的な事業運営のために必要でした。同時に、お客様に対しデータドリブン経営のリファレンスモデルを提示することも大きな目的でした。方向性に関して経営トップの理解を得たことで、2023年4月に基幹システム刷新プロジェクトがスタートしました。

株式会社DTS
情報システム部
業務改革推進担当 担当課長
内山 一弘 氏
採用のポイント
クラウド、Fit to Standardの観点から
SAP S/4HANA Cloudを選択
システムインテグレーターとして基幹システムの豊富な導入実績や知見を持つDTS。しかし、自社の基幹システム刷新は容易ではありませんでした。技術だけでなく、現場との調整が必要となるからです。「主人公は業務主管部門です。情報システム部は業務改革に向けてリードする役割を担います」と内山氏。プロジェクトは、経理部門、経営企画部門、業務推進部門など関連する業務部門を巻き込み、各部のリーダークラス・スタッフも参加して進められました。DTS 情報システム部 プロジェクトリーダー 中村嘉稚氏は次のように説明します。

株式会社DTS
情報システム部 業務改革推進担当
プロジェクトリーダー
中村 嘉稚 氏
「業務部門のリーダークラスがプロジェクトに参画しました。キックオフでは、共通の目的に向かって一体感を醸成し、業務改革の覚悟を示すために各部から『Fit to Standard』宣言が行われました。業務をサービスの標準プロセスに徹底的に合わせることで、社内データの一元化、シームレス化を図り、データドリブン経営を実現するというものです。データに基づき、業務改善サイクルをスピーディにまわし、生産性や創造性の向上を図ります」

株式会社DTS
情報システム部 業務改革推進担当
プロジェクトリーダー
中村 嘉稚 氏
Fit & GapとFit to Standardアプローチの違い
「標準にあわせる」ためのプロジェクト工数を何処にかけるか?
-

Fit & Gapアプローチ
-

Fit to Standardアプローチ
業務を標準プロセスに徹底的に合わせることで、
社内データの一元化、シームレス化を図り、
データドリブン経営を実現。
アドオン開発の最小化によりコスト削減も図れる
経営トップもFit to Standardの重要性を語り、全社方針であることの浸透を図りました。新基幹システムの製品選定で重視したのも「業界ベストプラクティスと運用負荷軽減の両立」でした。またIT人材の有効活用、持続可能なインフラの観点から、クラウドを活用したマネージドサービスも採用のポイントとなりました。内山氏は当時を振り返ります。
「クラウドを基準とし、グローバルでシェアの高い基幹システム製品を抽出しました。複数製品を検討し、採用したのがSAP S/4HANA Cloudです。ポイントは、業界別にベストプラクティスが提供されていること。また、必要とする機能がカバーされている網羅性もアドバンテージとなりました。さらに、マネージドサービスを利用することで、短期間かつ確実な環境構築はもとより、監視、バックアップ、バージョンアップの自動化などをSAP社に任せることができます。運用管理負荷軽減と高可用性の両方を実現できる点を評価しました」
SAP S/4HANA Cloudは、一気通貫で部門や業務領域を超えてデータがつながります。「従来、分散したシステムからデータを収集しExcelで資料を作成していました。データの一元化によりデータ収集など中間作業がなくなります。またSAP S/4HANA Cloudのレポート機能により、ガバナンスをきかせたうえで必要な情報を柔軟に取り出すことができます」と、DTS 情報システム部 業務改革推進担当 シニアスペシャリスト 竹本奏湖氏は話します。
導入のプロセス
情報システム部と現場の間で認識のギャップ、
メンバー総出で専用チャットにて対応
2023年8月、DTSはSAP S/4HANA Cloudの採用を正式決定。販売、購買、プロジェクト管理、管理会計、財務会計と、外注管理システムSAP Fieldglass®を導入。既に利用していた経費精算システムSAP Concur®を含め、業務の再編成を行うことで効率化とコスト削減も図りました。
今回の導入プロセスで重要なポイントとなったのが、「業務を、どうSAP S/4HANA Cloudの標準プロセスにあてはめるか」を決めることでした。プロジェクトに参画した各部門のリーダーを中心に業務一覧を作成し、見直しも含めて設計を行い、各部門の中間に位置する業務や、これまでにない位置付けの業務に関しては、情報システム部がリードして進行。この工程(Explore、評価フェーズ)は、2023年12月から2024年6月まで半年以上にわたり行われました。
導入プロセスにおける現場観点では、現場に対する説明が焦点となりました。2024年7月(Realize、実現化フェーズ)から、少人数制でキーパーソンに集まってもらい、説明会やリモート会議を何度も実施しました。しかし、システム更改について、利用部門の理解を得るのは、容易ではありませんでした。情報システム部と利用部門の間で認識のギャップがあったのです。竹本氏は当時をこう振り返ります。

株式会社DTS
情報システム部 業務改革推進担当
シニアスペシャリスト
竹本 奏湖 氏
「情報システム部としては、独立したシステムから全体がつながるシステムに変わることのインパクトを伝え、全体構造を把握してほしいと思っていました。たとえば、プロジェクト作成時に組織設定を誤ると、そこにかかる人件費や経費もすべて間違ったものになってしまいます。しかし、利用部門が気にしていたのは『自分の作業がどうなるか』でした」
2025年の年が明けても認識のギャップを埋めきれていませんでした。カットオーバーが迫り利用部門も危機感を持ち始めます。「既存基幹システムは、当社の業務プロセスに合わせていました。しかし、SAP S/4HANA Cloudはデータの持ち方が全く異なります。問い合わせが急増したため、専用チャットを設け、プロジェクトメンバー総出で対応しました」(DTS 情報システム部 業務改革推進担当 ITコンサルタント 石川智香子氏)
「新基幹システムのリリース直前、専用チャットは映画のエンドロールのように質問が続きました」と竹本氏。同プロジェクトではシナリオ動画や説明書を提供していましたが、質問の多くは、自分が担当する「これをするのにどうしたらいいか」でした。「作業に目が向くのは理解できます。大事なのは、基幹システムの刷新は業務改革と一体となっているということです」(内山氏)
2025年2月にマスターデータの移行を実施。「情報システム部でデータを整備するクレンジングツールをつくり、利用部門に提供しました。必要・不要といったデータの整理とクレンジング結果の確認を利用部門で行い、情報システム部が元データの提供を受けて、SAP標準データ移行ツールを使って移行しました」と、石川氏は話します。

株式会社DTS
情報システム部
業務改革推進担当
石川 智香子 氏
今回、ビッグバン的導入を行った理由について竹本氏はこう説明しています。「例えば先行して会計システムだけを移行した場合、既存の発注システムや受注システムと連携する機能をつくる必要があります。SAP S/4HANA Cloudと既存システムはデータ構造が異なるため、段階導入はリスクが高い。短期間構築、品質に対するリスク回避、安定性などの観点を考慮し、一気に刷新する方法を採用しました」

株式会社DTS
情報システム部
業務改革推進担当
石川 智香子 氏
ビッグバン的導入は、現場の負荷が高くなります。「利用部門に対し、会計に関して2024年度分は旧システムで終わらせて、新しいプロジェクトはSAP S/4HANA Cloudに入力してください、とお願いしました。現場の協力があったからこそ、ビッグバン的導入を実現できたと感じています」(石川氏)

導入効果と今後の展望
必要な時に必要な情報の活用、
ノウハウをお客様に還元
2025年4月に、SAP S/4HANA Cloudによる新基幹システム本稼働後、安定運用を続けています。業務部門はデータ入力や登録などを行い、第一四半期の決算も終えました。導入効果について竹本氏はこう話します。「現時点では、現場にとって作業が増えたとしか思えないかもしれません。今やっとデータがそろってきた状態です。SAP S/4HANA Cloudのレポート機能を使って、自分の見たいものを見ることができます。ドリルダウンして深掘りすることも可能です。経営層や現場において、必要な時に必要なデータを活用し判断できるメリットは大きいと思います。最近はレポート活用に関する問い合わせが増えてきました。」
従来、業務主管部門が月1回のレポートを作成するまで、現場ではプロジェクトの採算を把握できませんでしたが、今は、採算を含めプロジェクトの状況をリアルタイムで確認できるようになりました。予算超過の兆しに対し、迅速に手を打つことが可能です。
運用面の効果については、「基幹システムに関してハードウェアとアプリケーションの運用・保守作業負荷が大幅に軽減されました。運用に要していた時間を、戦略立案や支援などにあてることができます」(中村氏)
中村氏は、「SAP S/4HANA Cloudは最新機能や技術をいち早く利用できる点も大きなメリットです。また、当社も生成AI活用に力を入れており、今後は生成AIによる開発支援機能やユーザ支援機能の活用にも期待を寄せています」とコメントを加えます。
Fit to Standardを徹底したことでアドオン開発を最小化できました。どうしても必要なものについては、PaaS(Platform as a Service)型システム基盤のSAP BTP(Business Technology Platform)を利用。「SAP S/4HANA Cloudに手を入れるのではなく、BTP上で効率的に開発・拡張できます。バージョンアップ時の影響範囲の調査や検証にかかる工数を大幅に削減できます」
プロジェクトを通じて導入を成功に導く勘所について、「標準機能を使い倒し、シンプルを目指すこと」とメンバーの意見が一致しています。追加開発したい機能がアップグレードで対応可能になった例や、運用を変えるだけで実現できることもあったといいます。
今後の展望について内山氏は、「SAP S/4HANA Cloudは導入したばかりです。データに基づく業務改革はこれから本格的に取り組むフェーズに入ります。また、今回、実際にSAP S/4HANA Cloudの導入に取り組んだことでわかったポイントや課題が、お客様提案に役立つことを期待しています。」
お客様のビジネスをDXで強くするDTS。「継続的な進化」に挑み、自社の成長をお客様の発展につなげていきます。
導入側とユーザー側、両視点を備えた実践型パートナー
DTSは自社でSAP S/4HANA Cloud Public Editionを導入し、業務標準化とデータドリブン経営を実現しました。導入ベンダーでありながら、自らもユーザーとして改革を遂げたDTSは、導入側とユーザー側の両視点を持つ実践型パートナーです。自社で培った知見をもとに、SAP S/4HANA Cloud Public Editionの外販を通じて、お客様のDXと持続的な成長を支援していきます。

